ふるさと納税にAIを活用ー地域創生を促進

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クライアント概要

自身の出身地や応援したい自治体への寄付によって、居住地に納める住民税の一部が控除されたり、所得税から還付されたりする「ふるさと納税」制度は、導入から17年が経ちました。寄付金の使い道を自分で選べることや、地域の魅力的なお礼の品を受け取れることも特徴の一つです。

株式会社トラストバンク(以下、「トラストバンク」)が運営する「ふるさとチョイス」は、ふるさと納税の国内最大級プラットフォームとして、全国の95%を超える1,700超の自治体と提携し、地域の名物である特産品から現地でのアクティビティチケット・宿泊券などの”体験型”、そして日用品に至るまで、76万点(2024年10月)を超える多彩なお礼の品を提供しています。

トラストバンクは「自立した持続可能な地域をつくる」というビジョンを掲げ、自治体の主体的な発展と未来への継続を支援しています。この思いが事業活動の原動力となっており、お礼の品を通して、寄付者が地域との新しい関係を築き、交流人口を増やすことを目指しています。ふるさと納税が自治体外向けのサービスである一方、自治体の職員の業務をDX化する自治体支援事業や自治体内での循環を助ける意味での地域通貨の提供など、その自治体で暮らす人々へのソリューションも提供しています。

トラストバンク:地域経済循環図

課題

「ふるさとチョイス」は全国の95%を超える1700超の自治体と契約し、ポータルサイトとして最大級である全国約76万点の地域ならではのお礼の品を掲載していることが強みです。しかし、当時のモバイルアプリには以下のような課題がありました。

  • アプリならではの利便性や楽しさを十分に提供できていない: ウェブサイトと同様の情報を提供するに留まってしまっており、アプリを利用するメリットを寄付者が感じられていない
  • 取り扱い商品は多いが特定の有名商品に寄付が集中してしまう: 人気ランキングや知名度の高いお礼の品に寄付が偏り、まだ知られていない地域のお礼の品を寄付者が知る機会が少なく、寄付者にとっても新たな地域との出会いを楽しめていない
  • お礼の品選びの楽しさと地域課題の認知の両立: 寄付者がお礼の品選びを楽しむことに終始し、ふるさと納税を通じて、知らなかった地域の情報や地域課題について、より深く知ることができる体験を提供できていない

Recursiveのソリューション

トラストバンクがモバイルアプリの改修を検討し始めた頃に出会ったのが、Recursiveでした。最先端技術を通じて持続可能な社会の実現を目指すRecursiveであれば、地域創生を基盤とした社会活性化を志向するトラストバンクと、共通の目標を共有しプロジェクトを推進できると考え、協業にいたりました。

トラストバンクとRecursiveがまず着目したのは、取り扱い商品が豊富であるにも関わらず注文が特定の自治体やお礼の品へ集中してしまっている点でした。その解消に向け、パーソナライズされたお礼の品を提案するアプリ内チャットボット「チョイスAI」の開発に着手。アプリならではのユーザーとの多角的な関係を活かしたコメンデーションの導入に注力し、利用者がより多くの地域やお礼の品と出会い、ふるさと納税における体験価値や満足度が向上することを目指しました。

ふるさと納税モバイルアプリに統合された「チョイスAI」インターフェース

「チョイスAI」には、AIエージェントの中でもより高度なタスクを行えるマルチエージェントをいち早く導入。従来のシステムのように、固定的なパターンや文言に依存するのではなく、マルチエージェントでは複数の自律エージェントが相互作用し、複雑な問題を協調的または競争的に解決します。「チョイスAI」では、会話の流れを解析し、AIエージェントが自律的に応答内容を調整することが可能となりました。

例えば、ユーザーが挨拶をすると、AIエージェントは友好的な挨拶で対話を開始し、その後、徐々に会話の焦点をお礼の品へ絞り込むといった具合です。これにより、ユーザーの好みが明確でない場合でも、AIは質問を通じて興味関心を徐々に絞り込み、深い理解へと導きます。

また、ユーザー属性(年齢、居住地など)や過去の利用履歴といった内部データに加え、季節トレンドなどの外部データも統合。高度なアルゴリズムを駆使し、ユーザーの潜在的なニーズや興味関心を多角的に分析します。チョイスAIではこうした詳細なユーザープロファイルを活用した独自のレコメンデーションエンジンを駆使し、約100万点にも及ぶ豊富なデータベースから最適なお礼の品を提案します。

「チョイスAI」が対話を開始し、質問で内容を明確化することで、最適な返礼品を提案。

データセキュリティ及びプライバシーにおいては、個人情報保護のため、LLMによるマスキングを行ってからデータベースへ保存するなど、Recursiveならではの工夫を施しています。通信経路やデータベースの暗号化、厳格なアクセス制御、脆弱性管理システムの導入、詳細なログ監査など、多層防御によるセキュリティ対策を実装しており、ユーザーの個人情報を厳重に保護します。また、チャットの内容で法的に問題がありそうなもの、サービス自体に関係ないものが入力された場合はモデレーターモデルを経由するなど、高度な回答制御を実装しています。

LLMを活用した「模擬ユーザー」によるパフォーマンス評価

本格導入に先立ち、RecursiveはチョイスAIの性能を厳密に評価するため、大規模言語モデル(LLM)を活用した「模擬ユーザー」を開発し、実際の寄付者の行動をシミュレーションしました。この評価では、寄付者の年齢、性別、出身地といった属性を考慮し、チョイスAIに対する要求レベルを以下の4段階に設定しました。

  • 非常に容易: ユーザーは明確な目的意識を持ち、質問されずとも積極的に関連情報を提供する
  • 容易~中程度: ユーザーは明確な目的意識を持つものの、質問されない限り関連情報を提供しない
  • 中程度: ユーザーは具体的な目的意識を持たないものの、特定のイベントでの利用を想定。関連情報は質問されない限り提供しない
  • 困難: ユーザーは具体的な目的意識を持たず、関連情報も質問されない限り提供しない。ただし、適切な提案があれば選択を促される可能性がある

評価の結果、チョイスAIは78%という高い正答率を達成し、週次・月次の人気商品に偏重した既存の推奨システムを大幅に凌駕する結果を実証しました。この結果は、チョイスAIがより高度で魅力的、かつパーソナライズされた推奨を提供することで、寄付者の体験向上に大きく貢献することを示唆しています。

チョイスAIに導入されている技術:3つを組み合わせることで複雑かつ難易度の高いシステムを精度高く提供

お客様の声

トラストバンク 代表取締役社長 川村憲一 氏のコメント

「我々が目指す『自立した持続可能な地域』の実現において、Recursiveの先端AI技術を用いた協業は大きな推進力となります。まずは、ふるさとチョイスにおける寄付者の体験向上を図っていくとともに、自治体向け支援の領域なども視野に協業することで、持続可能な地域社会を築いてまいります。」

トラストバンク チョイス事業本部プロダクト統括部長 建山 雄旗氏のコメント

最先端の技術を持ち、常に知識をアップデートしているRecursiveと、1700を超える自治体とのコネクションを持つトラストバンクという両社の強みを掛け合わせることで、単なる技術導入に留まらず、新たな地域経営のサポートやビジネスモデルを生み出す機会になると感じています。人口減少という課題に直面する中、持続可能な地域社会の実現に向けて積極的にチャレンジしていきたいと考えています。

トラストバンクチョイス事業本部プロダクト統括部プラットフォーム推進部部長 平野 一生氏のコメント

チョイスAIはローンチしたばかりですが、その可能性に期待しています。得られた結果を分析しながら、今後はお礼の品選びだけでなく、例えば定期購入メニューやレシピ提案など、お礼の品を活かして地域の魅力をより深く発見できるような、情緒的な検索体験を提供できるよう進化させていきたいと思います。

成果

チョイス AIの導入によって「ふるさとチョイス」の機能が拡張され、寄付者の皆様はより快適に、ご自身のニーズに合った寄付先を見つけられる新しい体験が得られます。これにより、以下の成果を目指します。

  • ふるさと納税の利用促進: 個々のユーザーに最適化されたお礼の品や寄付先の提案を通じて、ふるさと納税の利用を促進し、自治体における地域振興のための財源を拡充
  • アプリのダウンロード数増加と活用率の向上: 魅力的な機能と体験の提供により、さらなる寄付者の参加とエンゲージメントを促進し高め、最終的に自治体への財政支援を強化。また、より便利で魅力的なアプリ体験を提供することで、既存ユーザーの利用頻度を高め、新規ユーザーの獲得を促進
  • 寄付満足度の向上: パーソナライズされた情報提供とスムーズな寄付体験を通じて、寄付者の満足度を高め、継続的な利用を促進

お礼の品をきっかけとして、地域ならではの魅力を寄付者に知っていただき、新たな出会いの創出を目指すトラストバンク。レコメンデーション機能を通じて、最適なお礼の品への最短ルートをご案内すると同時に、今後は地域情報もお届けし、地域への関心がより深まるような展開が期待されます。

お客様の声

トラストバンク 代表取締役社長 川村憲一 氏のコメントさんの顔写真

「我々が目指す『自立した持続可能な地域』の実現において、Recursiveの先端AI技術を用いた協業は大きな推進力となります。」

トラストバンク 代表取締役社長 川村憲一 氏のコメント

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その他のケーススタディ

Recursiveについて

先端AI基盤を開発し、 持続可能な未来を創造

Recursive(リカーシブ)の技術プラットフォームはAIを用いることで、機密性と重要性の高い事業活動や業務を支えるだけでなく、持続可能でROIが高いビジネスモデルを実現します。 Recursiveの技術は、お客さまのニーズに合わせて完全にカスタマイズされるため、AIの導入を加速化し、お客さまのビジネスプロセスにおいても高い付加価値をもたらすことができます。

mainFormulation1+mainFormulation2=mainFormulation3

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専門性と多様性に富んだチーム

GoogleのAI研究機関「Google DeepMind」の元シニアリサーチエンジニアを筆頭に、Recursiveのチームは、世界各国からあらゆる業界の専門家が集まり、多様性に富んでいます。AIを用いてお客さまのビジネスモデルを増強し、変革の支援をすることで、多くのお客さまから厚い信頼をお寄せいただいております。

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