対話を通じた組織変革を支援するコーチ・エィは、東京をはじめ、ニューヨーク、上海、香港、バンコクにも拠点を持ち、多言語でのサービスを提供するグローバルなエグゼクティブ・コーチング・ファームです。ICF*の認定機関として、グローバル基準に基づいた高品質なコーチングを展開しています。
創業以来、コーチ・エィはコーチングの品質向上とコーチの育成に一貫して取り組んできました。四半世紀にわたり培った実績と知見を活かし、独自のトレーニングに加え、海外の著名コーチや自社のトップコーチによるトレーニング、能力評価の仕組み整備・運用を通じて、在籍コーチの能力向上を図っています。
また、研究開発部門である「コーチング研究所」では、世界に先駆けてコーチング成果の可視化に取り組み、サービス改善に活用しています。
*ICF(International Coaching Federation):世界最大規模のコーチの非営利団体、国際コーチング連盟
コーチ・エィでは、専門的な訓練を受けた評価者によるコーチの能力評価が、コーチ育成の重要な役割のひとつを担っています。クライアントの同意を得た上で録音されたセッションは、ICFのコア・コンピテンシー*およびPCCマーカー**を基準に、複数名の評価者によって確認・評価されています。
しかし、すべてのセッションを人手で評価をするには多大な時間と労力を要するという課題がありました。このような背景のもと、コーチの育成をさらに加速させるため、AI技術を駆使した品質評価ツールの開発に着手しました。柔軟かつ迅速なカスタマイズに対応する最先端のAIソリューションと、卓越した開発力が評価され、開発パートナーにはRecursiveが選定されました。
*ICFコア・コンピテンシー:ICFが定める優れたコーチの行動特性。
**PCCマーカー(Professional Certified Coach Marker):ICFコア・コンピテンシーを具体的な行動レベルで示す評価指標。ICFコア・コンピテンシーに基づいてコーチングが行われているかを評価するためにICFが設計したもの。
Recursiveは、自社開発したAI プラットフォーム「Recursive AI」を、コーチ・エィのコーチング品質向上に活用できるよう、同社専用のAIエージェントとしてカスタマイズ開発しました。本エージェントは、クライアントの同意を得て収集したセッション音声データを活用し、初期評価の自動化を実現します。
本AIエージェントは、「基盤を整える」「関係をともに築く」「効果的なコミュニケーション」「学習と成長を促す」というICFのコア・コンピテンシーに基づいており、PCCマーカーに示される具体的なコーチング行動を評価します。
さらに、コーチとクライアントの会話内容だけでなく、声のトーン、間の取り方、話すスピード、発話比率といったメタコミュニケーション情報も分析の対象としています。
評価エンジンには、大規模言語モデル(LLM)が採用されており、セッションの書き起こしとPCCマーカーの定義を数値化したものを比較した上で類似度を算出し、評価を実施します。類似度が約80%以上であれば、対象項目は「合格」と判断されます。
また、PCCマーカーに関する説明といった補足指示もモデルに与えることで、評価の精度向上を図ります。
AIは以下の情報を出力し、コーチング・セッションの評価をフィードバックします。
さらに、特定のコンピテンシーが十分に発揮されていない可能性のあるセッションや、クライアントの反応に偏りが見られる場合など、追加確認が必要なセッションを自動で抽出し、フラグを立てる機能も搭載されています。
本AIでは音声データそのものではなく、既存の音声解析ツールによって生成されたテキスト情報のみを処理するため音声データ自体をAIが直接扱う機会をなくすなど、クライアントのプライバシー保護にも最大限の配慮を払うように設計されています。
開発段階では、セッションの取得から解析、そして結果表示までを一貫して行う簡易的なWebアプリケーションで検証が進められました。今後の運用方針に応じて、デスクトップやモバイル版の開発も検討していく予定です。
AIエージェントの導入は、コーチング・セッションの評価とフィードバックのプロセスが効率化し、迅速な品質確認と改善を可能にしました。その結果、社内コーチの育成とスキル向上が加速し、提供するコーチングおよび関連プログラムの品質向上に寄与しています。
Recursiveとコーチ・エィは、引き続き共同で開発を推進し、本格運用に向けた段階的な展開を図ってまいります。