「未来志向のサステナビリティ×ビジネス視点」サステナビリティと収益性の両立のために知っておくべき世界のトレンド

ESGSDGsRecursive2023-08-01

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株式会社スコープ様の社内セミナーにおいて弊社COOの山田勝俊が行ったセミナーの内容をダイジェストでお届けします。講義を2回に分けて実施の予定で、今回は初回基礎編になります。

現状:日本はプラスチック排出量世界2位

日本はプラスチック製品の消費が非常に高く、1人当たりプラスチック容器包装の廃棄量を国別で比較した場合、日本はアメリカに次いで2番目に多く廃棄しています。 プラスチック廃棄物が適切に処理されないで海洋に流出する場合(以下「海洋プラスチックゴミ)とする)、海洋生物の生態系に悪影響を及ぼすだけでなく、海岸や海洋環境を汚染する原因となりますが、ペットボトルが海で分解されるのは400年かかるというデータもあり、海洋プラスチックゴミが増え続け、このままでは2050年の未来は魚よりも海洋ゴミが多くなると言われています。日本では、スーパーや飲食店で提供される使い捨てプラスチック容器や包装材などが大きなプラスチック廃棄物の原因とされています。これらのプラスチック削減には取り組みが必要です。

これらのプラスチック廃棄問題を解決するために、日本ではプラスチック袋の有料化や、再使用可能なプラスチック容器の普及を促進する取り組みが行われていますが、さらなる環境保護と持続可能性を目指し、この課題に取り組みながらも、事業として成立させている企業も世界的に増えてきました。

サステナビリティと経済性を両立した世界のビジネス事例

まず一般消費財では、アメリカで2016年に創業されたAllbirds(オールバーズ)というフットウエアとアパレルのブランドは、できるだけ環境に優しい素材を利用して製品化しています。すでに株式上場もしていて、企業価値1800億円以上とされており、環境負荷を考慮しながらも収益という柱を築いた代表的な例です。他にもエコアルフというスペイン発祥のファッションブランドや、KAPOK KNOTという木の実を由来にした素材を使用している日本のアパレルブランドがあり、サステナビリティに意識を向けた企業やブランドが増えてきています。 また、最近注目されている手法として、アップサイクルというものがあります。これは、副産物や廃棄物などの役に立たない製品を再利用し、より価値のある新しい材料や製品にアップグレードする手法です。例えば、ビールの製造過程で出るビール粕を、クラノーラにアップサイクルするといった具体的な取り組みがあります。

「エシカルス・ピリッツ」という日本のスタートアップ企業は、アップサイクルを活用して日本酒の粕などからスピリッツを製造しています。エシカル生産及び消費に特化した世界初の再生型蒸留所として話題になり、またパッケージのデザイン性の高さから贈り物としても流通しています。 また、アップサイクルでは、ヴィーガンレザーを使用した製品も世界中で増えてきています。例えば、アップルレーザーやパイナップルレーザーの他に、サボテンレザーのスニーカーなども世界で話題になりました。

さらに、ディープテックと呼ばれる特定の自然科学分野での研究を通じて得られた科学的な発見に基づく技術を持った企業も増えています。ヨーロッパを中心に浸透しているこの概念が日本でも注目され、ディープテック分野で世界的なネットワークを有するHello Tomorrowは、世界中の企業や起業家、リサーチャーなどとディープテックを推進し、多くののディープテック企業が活躍しています。

世界の消費者トレンド

ヨーロッパでは、環境や社会に悪い影響を与える商品は80パーセント以上の人が買わないという意識が広まっています。特に牛肉は温室効果ガスを多く排出する食品として認識されており、ヨーロッパの大学でも牛肉を提供しないところも増えています。 また、世界的にも環境に悪いことをしている企業の商品を避ける意識が高まっており、80パーセント以上の人がそうした商品を選ばない傾向があるようです。特に持続可能な商品やサービスに興味を持つ人が増えています。

例えば、大学や企業でもESG(環境・社会・ガバナンス)を重視した投資や経営が進んでいます。ESGに対する投資額は年々増加しており、2025年には更なる増加が予想されています。 日本でも、ヨーロッパのトレンドに追いつくためにはESGを重視した取り組みが必要とされています。ただし、現段階ではESGだけによって経営することは難しい場合もありますが、ESGに対応しないとお金が集まらなくなる可能性もあるため、対応が必要です。

日本と世界の政府動向

日本政府は、2050年までにカーボンニュートラルを達成する方針を発表しています。世界全体でも2050年までにカーボンニュートラルを目指す国や地域が増えており、例えばイギリスやEUは中間地点で異なる数字を設定しています。このように世界全体が持続可能な方向に向かっていると感じられるので、この流れは止まらないだろうと思われます。 現在は政府の発表により、企業やコンサルティング会社などが一斉に動き出しており、特にサステナビリティ関連の買収が相次いでいます。大手企業はサステナビリティ部門を新たに作ることが増えており、チーフサスナビリティオフィサーと呼ばれる専門家の登用も増えています。サステナビリティに対する需要が高まっているため、その分野の専門家は注目されており、企業側もサステナビリティの情報発信が重要だと認識しています。

ESG経営の始まり

2020年頃からESG(Environmental, Social, and Governance)投資の動きは非常に活発になったように思います。2020年12月に運用大手の30社が企業連合「ネット・ゼロ・アセット・マネージャー・イニシアティブ」の共同設立を発表しました。そして、2021年には87兆ドルに相当する資産がこのイニシアティブに参加し、運用資産が増加しています。 代表的な機関投資家であるブラックロックは、2020年1月にブラックロックは顧客が将来に向けてサステナブルに投資できるよう一連の行動計画を発表しました。また、日本国内外全体でESGの投資額全体も驚異的な伸びを見せており、2018年から2020年までの2年間で、世界全体のESG投資額は15.1パーセント増加して、35兆ドルとなりました。そして、2025年までには更なる増加が予測されており、運用資産の約3分の1に当たる53兆ドルに達成すると予想されています。

広告業界の動きが更なる起爆剤に 最近の広告業界の動向を簡単にまとめます。現在、広告の制作や展開においてCO2排出量の測定と削減が求められ始めています。広告業界誌「アドウィーク」は、スーパーボール期間中に展開された広告のCO2排出量を概算しています。また、アド・ネット・ゼロという組織が立ち上がり、広告業界をネットゼロに導くための取り組みを進めています。例えば、アセンブリーが広告業界のCO2排出量を監査できるツールを立ち上げる計画を発表しています。また、カンヌラインズ広告祭が今年から作品の応募条件を変更し、応募者には作品に伴うCO2排出量やサステナビリティ関連のインパクトについての情報提出を推奨しています。

今年は初めての試みであり、審査基準には含まれませんが、これらの動向を把握し、サステナビリティを取り入れたビジネス戦略を展開していくことが広告業界においても、重要になっています。

今後のサステナビリティビジネスに関する意識の動向 一見CO2の問題とは遠いと思われていた広告・クリエイティブ業界での動きもあり、人々の意識も変わってきています。世界的なデータによれば、マーケターたちに大きな意識変革が起きていて、90%の人がサステナビリティ計画は人々から共感される、魅力的なものでなければならないと考えており、94%が変化をより促進するために、有効な行動と新しい試みを行う必要があると考えております。

また、企業はサステナビリティの取り組みをより効果的に発信する必要があります。企業がサステナビリティのストーリーを誇りに思っている割合は約40%とあまり高くはありませんが、順調に伸びてきてこの数字となっています。 一方でESG投資も堅調に増えてきていて、企業はよりサステナビリティに対して意識を高めています。投資家や消費者に後押しされています。

現在は自社内にサステナビリティに関する人材を持たず、外部のコンサルタント会社に依頼している企業が多いですが、これからはサステナビリティ人材をビジネスに組み込む形の流れになっていくのではないでしょうか。サステナビリティに関する意識は若年層の間で特に高いので、彼らが成長して社会人になる頃には、さらに大きな変動となる可能性があります。

■セミナー参加者の声

また、セミナー後の感想として、次のような感想をいただきました。 「日本と世界との考え方の取り組み方の違いを感じました。世界ではより厳しい取り組み方をしており、遅れを感じました。」 「サステナビリティが、こんなにもビジネスチャンスがあるのかと驚きました。地球環境の問題だという意識から、ビジネスマインドに意識が切り替わったのでとても勉強になりました。」 「サステナビリティ活動がどうビジネスに繋がるのかという部分が聴講前はクリアではなかったが、どこからお金が発生してどうビジネスになっていくかの流れが良く理解できました。」

Recursiveでは、社会におけるサステナビリティとビジネスの両立をより普及すべく、事業を推進していきます。

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Co-founder and COO

Katsutoshi Yamada

ディーキン大学経営大学院卒業後、日系、外資のIT業界での勤務経験を経てエシカルファッションの日本市場立ち上げと2社の起業を経験。その後、多国籍AIスタートアップ、コージェントラボでセールスディレクターとしてAI-OCR「Tegaki」の立ち上げに関わると同時に200社以上の企業にAI導入コンサルティングを行う。2018年度からAI、ブロックチェーン、エンジニアスクール会社を日本、シンガポール、ベトナムで連続起業した後、2020年8月、株式会社Recursiveを共同創業。現在、売上規模数百億円~数兆円の複数社の新規事業開発、AIプロジェクトのアドバイザーも務める。