【プレスリリース】「AI×サステナビリティ×オープンイノベーション」セミナーレポート 〜自律的AIによる不動産、教育分野のエージェント機能の事例紹介から、人口減少問題における生成AI使用法の提言まで〜
EventPress release2023-07-07
株式会社Recursive(本社:東京都渋谷区 代表取締役:ティアゴ・ラマル、以下「リカーシブ」)は、オープンイノベーションプラットフォーム「AUBA(アウバ)」を運営する株式会社eiicon(本社:東京都港区 代表取締役社長:中村 亜由子、以下「エイコン」)と共に、「AI×サステナビリティ×オープンイノベーション 業界最前線プレイヤーが語る未来」と題し、2023年6月29日(木)にセミナーを開催しました。このセミナーの内容を抜粋し、ダイジェストでお届けします。
左からモデレーターの若林 峻氏、ティアゴ・ラマル氏、村田 宗一郎氏。北川 拓也氏はオンライン参加
登壇者は、公益社団法人Well-being for Planet Earth共同創業者兼理事である北川 拓也氏(以下、北川氏)、2020年に日本でリカーシブを設立したティアゴ・ラマル(以下、ラマル氏)、及びオープンイノベーションのプロフェッショナルであるエイコンの村田 宗一郎氏(以下、村田氏)の3人。最近のマイクロソフト社によるOpenAI社への投資に触れ、自社でリソースを持たない分野を取り入れて活用することにより、より強力なビジネスを生み出す、このような世界のトレンドでもあるAIとオープンイノベーションの活用についてトークセッションがスタートしました。
Q1.すでに生成AIの活用が進んでいる分野は?
最初に北川氏よりAIが人間の代わりにエージェントとして機能について紹介されました。アメリカのAIスタートアップ企業Adept社が提供している自律的AIのサービスは、人間の自然言語を理解して答えを導き出す機能を有しています。不動産物件の検索を例にとり話は続きます。探している不動産の要件をAIに対して具体的に話しをすると、AIがウェブサイトを検索し、地図上から物件場所が示され、そこに現れる詳細リンクをクリックすると、希望要件に合った物件を表示されました。自然言語での問いに対し、自然言語で回答するのではなく、ウェブサイトの遷移やクリックなどで結果を導くサポートAIが始まっている、と解説されました。
一方、ラマル氏からは、単に文章を作成するだけでなく、文章を生成して返すという点では、企業や政府が情報開示しているが一般の市民が見つけにくい情報に対して、チャットボットが回答することで、情報へのアクセスがより便利になり、透明性の高い社会を実現できるだろうと解説しました。また、AIがエージェントとして機能する例として教育分野を取り上げ、生成AIがそれぞれの生徒に対して適切な問題をカスタマイズして生成、提供することで、学習効果を一層高められるので、この分野における生成AIの活躍が期待できると付け加えました。
北川氏が教育という観点でさらに紹介をしたのは、AIが勝率を分析する将棋番組で、一手打つごとに勝率が変化していくものでした。将棋を詳しくなかった人にとっても、戦況や文脈がわかるようになることにより、将棋観戦が面白く感じることで再び将棋ブームが起きている、と分析されていました。どのようなことでも文脈がわかることで面白いと感じることが増えることから「教育×エンターテイメント」という分野ではAIが大きな役割を果たせるのではないかと提言されました。
Q2. 生成AIの課題
ラマル氏より回答(アウトプット)のクオリティがまだ大きな課題の一つであると述べ、北川氏は実際にAIから明らかな虚偽回答をされたことがあるとのことで、2人からAIアウトプットのリファレンスチェックとファクトチェックは非常に重要だと解説されました。また北川氏は、アメリカでは倫理的な意思決定をAIができるのか、クリティカルな質問に回答できるのか、これらが課題とされ研究されていると続け、AIの決断によっては人の行動変異を起こすことができ、それが場合によっては良い結果へ導くこともあるが逆のこともあり得るので、AIのアウトプットについては非常に大きな影響を及ぼす重要な課題であると付け加えられました。
Q3.オープンイノベーションにおける日本企業側の課題/ Q4.この課題をどのように解決していくべきか
村田氏から、日本企業側の課題として3点あると説明されました。まず他社と一緒に進めるという意思決定ができていないこと、次にオープンイノベーションを手段としていながらも、何を実現するために他社と何をやるのかが明確になっておらず、例えば「DXに取り組む」といった成果や目的が曖昧なままであること、そして新しい技術分野に対する知見がないため、スタートアップ企業側へプロジェクトを任せる形になっていることが多いと説明されました。
日本企業とアメリカ企業の違いについて、アメリカではデジタルをビジネスの中心、資産と捉え専門家をおいて戦略を立てているが、日本企業はそのような考え方をしていないケースが多く見受けられることがラマル氏から説明されました。北川氏は、アメリカの雇用は流動的ゆえ、新しいことを学ばないと生き残れない背景があり、従業員の責任のコミットも明確だと述べました。また日本の調和を重んじる文化から、一つの課題に対して多くのステークスホルダーのコンセンサスを得ることだけに時間を費やしているケースも多いと付け加えました。
ラマル氏、北川氏の説明を受け村田氏は解決方法として、日本企業側はスタートアップ企業と一緒に新しいものを作るために、自分たちの強みなどを見直し、さらに業界や製品などのノウハウをスタートアップ企業側へ積極的に伝授していくことを提言しました。
Q5.テクノロジーを持っている企業側ができること
ラマル氏はデータを所持していない企業にはデータの集め方、データのクリーンアップ方法、そしてそのデータを生成AIのようなソリューションにどのように重ね合わせ、価値のあるものにしていくのか、このようなことを教育することができるだろうと述べました。続けて、データはキャッシュと同じくらい大切な資産だが、その認識を持っていない企業が多いことにも触れ、データの重要性の理解が深まるようにサポートしたいと意思を示しました。
北川氏からは日本企業側がオープンイノベーションによって何を期待しているのか、例えばそれがROI(投資収益率)なのか、経営ビジョンに基づいた話なのか、ニーズを把握し、スタートアップ企業側が日本企業側にどのような納得感を提供できるか、確認することが重要と説かれました。
Q6.持続可能な社会に向けて生成AIをどのように活用していくべきか 村田氏はわからないことを聞く、学んでいくという基本的なことが重要だと説きました。ラマル氏はAIソリューションへのアクセスを民主化することで、一人一人がエンパワーメントされていくことが重要だと語り、公正なアクセスをできる社会の実現を語りました。
そして北川氏からはサスティナビリティというと環境の問題が想起され、それは非常に重要な問題であることに間違いないが、人口減の問題へも対応可能だと考えていると発言されました。誰でもアクセスができるシステムがあれば、結婚、出産に関して考えているパーソナルな問題、例えばお金が心配で結婚へ踏み切れない人へはファイナンシャルアドバイザーのシステムが相談相手となって解決の手伝いをし、不妊治療などの相談もAI相談員が対応する。こういった個々の問題を解決するという利用方法もあるのではないのかと提言されました。
セミナーの内容を受け、参加者からはAI活用に関する新しい視点や知識を得た事や、オープンイノベーション実現に向けて助言となるような話が聞けたことなどに対して好意的な感想が述べられ、またAIの活用や共存する未来を明るく考えられるという声が聞かれました。
リカーシブでは、17か国の従業員が働く多国籍企業として、世界のAIトレンドなどを今後も不定期的にお伝えしてまいります。